4.同期検定装置の発明について


  日本でラジオ放送が始まる頃,安藤博は,近い将来ラジオはテレビに置き換わるであろうと予測しています。この時,非常に重要な技術の一つに「同期」がありました。つまり,テレビの放送局とテレビ受信装置の間や,ファクシミリ伝送(写真電送)では,送受信間の同期が取れないと,受信が出来ません。当時同期を取る方法としては,送信側の撮像装置と受信側のディスプレイ間をモータの軸で結んで同期を取っていました。しかし,これでは距離が離れると軸で結ぶ事が出来ず役に立ちませんでした。これに代わって電気信号が良いのですが,どの様に同期を取るか具体的な方法がありませんでした。  
  安藤博は,この同期を取る方法として,同期が取れたかどうかを光学的に見る方法を考案しました。ディスプレイとしてブラウン管など視覚に訴える電流に同期を加える様にしたのです。つまり,電流の変化を光の変化にする事を真空管で行う様にしました。この特許は1926年特許第78713号「同期検定装置」として公示されています。
  これにより,テレビやファクシミリ伝送(写真電送)など装置間の同期が簡単に行える様になりました。
早速,日本電気は,1928年(昭和3年)からこの特許をNE式写真電送装置に採用しています。このファクシミリは新聞社の写真電送や警察や国際通信などに採用され,さらに海外にも多数輸出され,世界的に注目されました。  


特許第78713号「同期検定装置」